第一回紫友セミナー
  「長七、沢哲、真(さな)ちんの流れを辿る」(寺門 克)


2007年6月30日に、第1回紫友セミナーが開催されました。
以下、当日の講演のさわりの部分だけ紹介させていただきます。
もちろん全文も読めます。A4版で5ページですので、印刷をして読んでいただければと思います。
全文をお読みいただく方はここをクリックしてください。
それではホームページ担当グループのまとめたさわりの部分をお楽しみください。
また、本文にはクリックすることで呼び出せるエピソードも満載です。
写真は紫友セミナー
1.小石川と六義園、そして伊藤長七初代校長
小石川高校の校舎のすぐ傍に六義園があります。その六義園が五中・小石川と関係があるのですが、どんな関係だと思いますか。
六義園の六義とは、中国の周時代の『詩経』のなかで詩を体裁と表現で六つに分類をした、風・雅・頌・賦・比・興のことです。これに倣って短歌を六つに分けて六義(むくさ)としたのが、古今集の撰者の一人、紀貫之です。柳澤吉保は、この六つの歌の形を庭園に配しようとしたので、六義園となったのです。
吉保に「古今伝授」をした歌学方が北村季吟。今では芭蕉の師だったということで知られています。もう察しのいいかたはお気づきでしょう。季吟は私たちの校歌の作曲者、北村季晴の直系の先祖なのです。
次の問題は、それではその季晴がどうして五中の校歌の作曲をしたのか。
北村季晴は明治学院で島崎藤村と同級でした。その藤村は明治32年小諸義塾の教師になり、38年まで小諸にいました。一方季晴は30年から34年まで長野師範で教鞭をとっていました。御承知のように伊藤長七は長野師範をでて、諏訪高等小学校、下諏訪小学校を経て小諸高等小学校に転任になったのは明治33年です。小諸を去ったのは34年。つまり、明治33年を中心とする短い間に、藤村、長七と季晴の活動の場所は重なり、三人は校友を深めていったのです。
府立第五中学校の校長となった長七が、自ら作詞した校歌の作曲を季晴に依頼するのは自然の成り行きでしょう。
めでたく無事に六義園から長七にたどり着くことができました。でも、長七と藤村の浅からぬ因縁はこれだけではありません。

伊藤長七初代校長
2.沢登哲一校長〈哲っつあん〉
沢登哲一、沢哲。私たちの同期生は〈哲っつあん〉と呼んでいますが、将校バンドに冷や飯草履、坊主頭で口をへの字に結び、入学式でも「おめぇらはまだ卵の殻を半分尻に付けているが、この学校では紳士として扱う。なにをやってもかまあねえが、他人様に迷惑だけはかけんなよ」と伝法な口調で話すのですから、粗っぽい印象を抱く人が多いでしょう。でも違います。
一度だけ授業がありました。教室に入って来るや、黒板に「ま こ と」と一字一字離してかきました。「『まこと』って、『こころのありかた』だ。そして『ふるまい』に現れる」。
卒業後は一緒に酒を飲む機会に恵まれました。酒を通じて、退き方や約束は守るものであることを、ふるまいで教わりました。「自由とまこと」を説かれたことに今頃気づいています。
 哲っつあんのように飲みたい、ふるまいたい、生きたい。わたしにとっては哲っつあんが一番大きな存在なのです。

沢登哲一校長
(青山高校同窓会ホームページより転載)

3.真田幸男校長〈真(さな)ちん〉
在学中は親しく接触する機会がありませんでした。でも、よく通る声と眉の鋭い顔だけは、分かっていました。お会いするようになったのは同窓会、とくに『70年史』の編集に巻き込まれてからです。
『70年史』は紫友ペンクラブの有志が編集にあたり、真ちんが委員長でした。わたしは編集の実務であれこれ調整にあたっていましたから、お会いする機会がふえました。
この頃知った話をいくつか紹介します。
粕谷さんからは「日本史の授業でやりのこしの近代史を国語担当の真ちんに1時間で講義してもらった。素晴らしかった」と聞きました。
後に、真ちんについて佐藤愛子がこう書いていることも知りました。
「五中から一高、東大を卒業すると、教師に……やがて小石川高校の校長になる。謹言居士だが生徒に慕われて……(中略)佐藤家にたった一人東大出の人格者がいた」

真田幸男校長
4お後がよろしいようで
長七、沢哲、真ちんは五中、小石川の流れそのものです。初代伊藤長七のあとは昭和5年4月から、落合寅平、11年11月から井上宗助、20年6月から沢登哲一、33年4月から寅平の息子である落合矯一、そして39年4月からが真田幸男で学園紛争の44年まで。その流れの中で沢哲と真ちんは、長七の創りあげた自由で伸び伸びした校風に掉さした印象がとくに強いのです。
お後が宜しいようで。
講演ありがとうございました。お疲れ様でした。

 
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